CMPとは何か
― 製品含有化学物質と資源循環情報をつなぐ “次世代プラットフォーム” の全貌 ―
製品含有化学物質情報の伝達に長年使われてきたchemSHERPAは、規制強化と資源循環(Circular Economy)対応の要請を受けて進化しています。
Chemical and Circular Management Platform(CMP)
は、化学物質情報と資源循環情報を統合し、サプライチェーン全体で接続・自動更新できる次世代の共通基盤です。この記事では、CMPの目的、仕組み、SDSに関わる準備をわかりやすく解説します。
こんなお悩みありませんか?
法規制改訂のたびに生じる「再調査」の工数が膨大
2026年からの「SDS対象物質の大幅拡大」にどう対応すべきかわからない
化学物質だけでなく「資源循環(リサイクル材)情報」の管理・開示も求められている
1. CMPとは何か
CMPは、製品に含まれる化学物質情報と資源循環(リサイクル材・由来情報など)を一元的に管理・伝達するための接続型プラットフォームです。
サプライチェーン上の企業がプラットフォーム上でつながり、情報更新が自動的に川下へ伝播する仕組みを目指しています。
2. 背景:なぜCMPが必要になったのか
• 規制の高度化
EUのREACH1)やSCIP2)、各国の製品規制が頻繁に更新され、企業は都度サプライヤーへ再調査を依頼する必要がある。これがサプライチェーン全体の負担になっている。
- 1)REACH(リーチ)は EUの化学物質規制の中核となる包括的な法律
- 2)SCIP = Substances of Concern In articles as such or in complex objects (Products)
→ 成形品または複合製品に含まれる SVHC(高懸念物質)情報を ECHA に提出する制度。
• 資源循環への対応
製品のリサイクル性や再生材の含有情報を求める動きが強まり、化学物質情報と資源循環情報を別々に管理することの非効率が顕在化した。
• デジタル製品パスポート(DPP)との整合
将来のDPPやサステナビリティ報告と連携するため、より構造化されたデータ基盤が必要とされている。
3. CMPが扱う情報の範囲と主要機能
扱う情報
- ・製品含有化学物質情報(chemSHERPA CI/AI相当)
- ・規制該当フラグ(SVHC等)とその履歴
- ・資源循環情報(再生材の種類・含有率・由来)
- ・トレーサビリティ情報(サプライヤー接続、更新履歴)
主要機能
- ・接続型データ伝達:プラットフォーム上で企業を接続し、情報更新が自動で伝播
- ・変更通知(Change Flag):規制追加や成分変更があった際に、影響範囲へ自動通知
- ・既存資産の取り込み:既存のchemSHERPAデータを取り込み・出力可能
- ・複数アプリ選択肢:複数ベンダーのアプリケーションがCMP上で動作し、企業は業務に合うアプリを選べる
- 【CMPコンソーシアムが認定予定のアプリケーション事業者】
- Sotas(化学品〜FA)
- NEC(化学品〜成形品)
- 富士通(FA〜成形品)
- dotD(化学品〜成形品、2027年4月以降)
4. chemSHERPAとの関係と互換性
CMPはchemSHERPAを「置き換える」のではなく、包含・拡張する形で設計されています。
既存のchemSHERPA
CI/AIデータはCMPに取り込め、必要に応じてchemSHERPA形式での出力も可能です。これにより、移行期の混乱を最小化しつつ、資源循環情報など新たなデータ項目を追加できます。なお、移行期間中はchemSHERPAとCMPの二重運用が現実的です。
5. 実証・運用スケジュール
2026年3月末から8月末にかけて大規模実証が行われており、2026年後半から段階的運用開始、2027年に業界別本格運用へ移行する可能性が高いと思われます。
従来の「バケツリレー型」の情報伝達から、CMPコンソーシアムがサプライチェーン全体へ一括でトリガーを発信する仕組みへの転換が進められています。
6. 企業にとってのメリットとリスク
メリット
- ・再調査工数の大幅削減(自動通知・接続型伝達)
- ・規制対応の迅速化とトレーサビリティ向上
- ・DPPやサステナビリティ報告との親和性向上
リスク・留意点
- ・初期導入コストと社内プロセスの再設計が必要
- ・サプライヤー側の参加率が低いと効果が限定的
- ・データ品質(正確な成分情報・由来情報)の担保が重要
7. SDSの変更の必要性
CMP(Circular Material
Platform)導入により、従来のSDS運用・chemSHERPA中心の規程では法令順守が担保できなくなる可能性があります。
理由は、CMPが従来のchemSHERPA中心の運用に
新しいステータス・新しい回答義務・新しいリスト更新体系 を追加するためです。
以下、2026〜2027年に必要となる改訂ポイントを整理します。
1. SDSの対象物質が“数万物質”へ拡大(2026年4月〜)
厚生労働省(安衛法)が具体的にリストで指定する「リスクアセスメント対象物質(SDS交付義務対象)」の数は2026年4月以降、約2,900〜3,000物質に拡大しています。厚労省の推計等において、日本国内で流通・使用されている危険有害性を有する化学物質・混合物(製剤)全体を合わせると実質的に「数万種類」規模に及ぶため、専門家や業界内では「2026年の制度全面施行により、実質数万物質時代の本格化」と表現されています。
改正後は、危険有害性のあるすべての化学物質がSDS交付義務の対象となります。
◇ CMPとの関係
- CMPでは「要申告物質ステータス」「要申告候補物質ステータス」を判定するため、SDSの危険有害性情報(GHS分類)が必須データになる。
2. SDSの記載項目が追加される(用途・使用上の注意)
厚労省改正で、SDSに以下が追加:
- - 想定される用途
- - 用途における使用上の注意
◇ CMPとの関係
- CMP回答では「用途情報」が必須。→ SDSの用途情報をCMP回答データに連携する運用を規程に追加。
3. SDSの“5年以内の定期確認・更新”が義務化(2026〜)
- - SDSは 5年以内ごとに内容確認し、必要に応じて更新
◇ CMPとの関係
- CMPの物質リストは毎年更新されるため、SDS更新とCMPリスト更新を同期させるルールが必要。
4. リスクアセスメント義務の対象が“全化学物質”へ拡大
- - SDS交付対象物質=リスクアセスメント対象物質
◇ CMPとの関係
- CMPステータス(要申告物質)とリスクアセスメント結果を連動させる必要がある。
5. SDS情報伝達の強化(別容器保管時も義務)
- - 別容器に移し替えた場合もラベル・SDS情報伝達が義務
◇ CMPとの関係
- CMP回答では「製品→部品→材料→物質」の階層情報が必要。
→ 社内の容器管理・ラベル管理をCMP階層構造に合わせて再定義する必要あり。
6. GHS分類の毎年更新 → CMP物質リストも毎年更新
厚生労働省の公式資料に基づき、GHS分類は 2026 → 2027 → 2028 年にかけて「約1,100 → 約700 →
約800物質」が順次追加されることが明確に示されています。
2029年以降も増加が続く(=実質数万物質時代の本格化)見込みです。
◇ CMPとの関係
- CMPの要申告物質リストも毎年更新されるため、規程に「SDS・GHS・CMPリストの年次更新を同期する」運用を追加する必要がある。
8. 従来の規程改訂の要点
CMP導入後の規程は、次の 6つの新しい義務を必ず組み込む必要があります。
- ① CMPステータス(要申告物質・候補物質)の判定義務を規程に追加する
- ② SDS情報(GHS分類・用途情報)を CMP 判定に利用する条文を追加する
- ③ SDS更新(5年以内)と CMPリスト更新(毎年)を同期させる運用を規程化する
- ④ chemSHERPA → CMP 変換手順と承認プロセスを規程に追加する
- ⑤ 資源循環情報(リサイクル材含有率・純度)を扱う新しい条文を追加する
- ⑥ 二重運用期間(2026〜2027)の暫定ルールを規程に追加する
9. まとめと今後の注目点
CMPは、化学物質管理と資源循環情報を一体化することで、サプライチェーン全体の情報伝達を効率化し、規制対応力を高める基盤です。
導入は段階的に進むため、早めに自社データを整備し、実証フェーズでのアプリ比較やサプライヤー支援計画を進めることが推奨されます。今後はDPPや国際規格との連携、データ標準化の進展に注目してください。
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【この記事の執筆・監修者】
今住 則之
株式会社アイアンドディー
顧問
技術士(化学部門)、環境計量士。石油元売会社の研究所にて製品開発や品質管理に従事したのち、産業技術総合研究所や大学機関との共同研究を歴任。長年の実務・研究で培った高度な知見を活かし、現在は国内外の法規制対応、製品SDS、環境管理など幅広いコンサルティングを手掛けている。
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